当院には毎日、毎日
こんな歯並びに関する質問が
よく寄せられます。
Q.ママからの疑問
「うちの子は歯並びきょうせい治療をした方がいいですか?」
A.私たちからの答え
「パパあるいはママにとってお子さんが豊かで幸せな人生を歩む事を心から強く願っているのであれば、ぜひやるべきでしょう!」
しかし例えば事情により生活を切りつめているご様子でしたら、無理にお勧めすることは当院では絶対にありません。大人になってから本人の責任において治療することも可能です。
さて、今日は真剣のお子さんの幸せを願っているご両親だけに特別に、口呼吸(こうこきゅう)と歯並びについてのお話しをします。
ちょっと難しいかもしれませんが頑張って聞いてください。
そんなある日、こんなご相談がありました。
Q. ママからの疑問
幼児の子育て中の母親です。子どもがいつも口をポカンと開けています。 歯並びに影響はありますか?(29歳 主婦)
A. ほとんどの人が、「私は鼻で呼吸している」と思っているのではないでしょうか。ところが、無意識のうちに口呼吸(こうこきゅう)をしているという人がかなり多いのです。
日本人の半数以上が口呼吸をし、小学生以下の幼児に至っては、8割近くが口呼吸をしているという調査結果もあります。
本来は私たち人間が呼吸をするのは鼻から吸う鼻呼吸が自然な形です。なぜなら、鼻には吸った空気を浄化する機能が備わっているからです。鼻呼吸は空気中のほこりを取り、乾燥した空気を適度な湿度にして、のどや肺にとって刺激の少ない空気にしてくれるのです。口はもともと呼吸をするためにあるわけではないのですが、人間は口でも呼吸ができてしまいます。
口呼吸をしてしまうと、乾燥した冷たい空気が口から直接体内に取り込まれることで、口腔内・喉が乾燥し、細菌などや直接侵入して、粘膜に炎症が起きます。
口腔内の粘膜の炎症は、白血球やリンパ球の異常をもたらして免疫に作用するためぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に関係しているという研究もあります。
口呼吸により体内に細菌が侵入すると、風邪などにもかかりやすくなります。また、唾液が不足することで口臭、歯周病、虫歯の原因ともなるのです。
口呼吸の方は「口内炎」ができやすく難治性であることを私はよく体験します。
さらには、唇の筋肉が弱くなってしまい、寝ている間も口があいてしまうことからいびきや歯列の乱れを誘発することもあります。顔もたるみやすくなり肌荒れなどにも影響します。このように口呼吸の弊害はさまざまです。
とくに最近は、子供たちから大人まで、さまざまな原因で口呼吸が増えているということは、報道で何回も取り上げられているほど大きな問題になっています。
こう
「口呼吸」あるかもチェック!
3つ以上当てはまれば、口呼吸かもしれません
口呼吸で荒れた口唇
鼻呼吸 | 口呼吸 | |
---|---|---|
ばい菌の処理 | 多くの病原菌を鼻粘膜で吸着し外の排出 | のどの粘膜から体内に入り全身へ |
空気調節 | 肺に入るために適切な温度と湿度に変換 | 乾燥して冷たい空気がノドと肺を直撃 |
鼻腔の乾燥 | 鼻腔内が適切な湿度に保たれる | 常に汚れが溜まり、ベトベトして詰まっている |
舌粘膜 | 適切な湿潤状態 | 乾燥している |
免疫力 | 適切 | 低下 |
酸素の吸収 | 適切 | 低下 |
舌の位置 | 下の歯の間に収まる | 舌の先端は飛び出し、根元は沈む |
下顎骨の位置 | 緩やかに上顎と咬み合う | 自然と押し下がる |
頭の位置 | バランスが取れている | 反射的に後方に傾く |
不正咬合の原因については、遺伝によりあごの形や大きさがご両親に似てしまう例や、頬づえ・指しゃぶりなどの悪習癖で顎がゆがんでしまう例などよく知られています。
実際はいろいろな要素が重なり、様々な形態の不正咬合が出現していると言っていいでしょう。
そんな中で昨今とくに注目を浴びているのが、口呼吸による不正咬合です。
アデノイド(咽頭扁桃)の肥大による気道の障害で出現する不正咬合については以前から専門家の間では指摘されていますが、
「鼻閉による口呼吸」はこれまであまり注目されていませんでした。
しかしここ数年来、ご相談にみえる幼児から小学生のお子さんの多くに発見されるようです。
鼻閉やアデノイドの肥厚で気道が狭くなると、どうなるのでしょう?
人は呼吸をしなくては生きていけないので、鼻からの呼吸ができなければ自ずと口で呼吸をするようになります。
口をポカンと開けていることによって、わずかですが「ほっぺた」からの内向きの圧力が強くなります。
そのため上顎の歯列が側方から押され、先の尖った逆V字型になってしまいます。
また、口呼吸をよりしやすくするために、舌の位置を無意識のうちに変えてしまいます。
安静時においても、喋ったり食べたりするときも、本来あるべき位置に舌がありません。
舌の位置がどこにくるかで、様々な不正咬合が出現してくるのです。
これまでは口(こう)呼吸が様々な病気の原因となったり、お子様の歯並びを大きく狂わせることをお話ししました。
「呼吸」は生命を維持する上で譲ることのできない最優先の機能です。
慢性鼻炎などで正常な鼻呼吸が行えなくなった場合、ヒトは下顎骨、舌、舌骨と呼ばれる可動性のパーツと頭部全体の位置を反射的に調節し、気道を拡げて肺への酸素供給を確保するのです。
具体的には口唇の周りの筋肉が緩み、口をポカンと開くようになり、下顎骨は強制的に下に押し下げられます。ほっぺの筋肉はピンと伸び、舌の先は前に飛び出し、舌の根もとは低く潜ります。
これらの変化により、歯に正常な圧力が加わらなくなり、奥歯は浮き上がり、上顎骨は狭窄し、前歯がうまくかみ合わなくなります。
つまり、成長期に口呼吸をしていると不正咬合となるのです。
それでは、口呼吸が原因となる不正咬合に対してどのような歯科治療を行えばよいのでしょうか。
お子さんが成長期の前の段階にある場合は、とっても簡単な方法でアプローチすることができます。
その方法とは、「うわあご」(上顎骨)を横に拡げてあげることです。
上顎の骨(舌で触ることのできる天井の部分)は左と右の骨に分解することができます。
左右の真ん中の「正中口蓋縫合」と呼ばれるギザギザのつなぎ目で半分ずつ骨同士が合わさっています。幼い頃は、正中口蓋縫合がまだ柔らかく、この部分で盛んに新しい骨が造られ、成長していきます。
この時期に、上顎の歯に器具をはめて横に拡大していくことで、縫合部が刺激されて新しい骨が添加されるので、上顎をさらに大きく成長促進させることができます。
またその奥にある鼻腔(鼻の穴の奥にある空気の通り道)の容積も広がり、鼻呼吸がしやすくなります。口から鼻へ呼吸モードの変換を促すのです。
その上、顎の成長を正常な方向に誘導することで、歯が並ぶスペースも増加しますので、その後の矯正歯科治療もとてもやりやすくなります。
口呼吸をしているお子様の上顎はほっぺの筋肉からの強圧によって狭くなっていることが多く、「うわあご」の天井(口蓋)が高い構造になっています。
固定式(スケルトンタイプ)の拡大装置を用いることで、確実に成長口蓋縫合部が開き、そこに活発に骨添加が起こります。
その結果として「うわあご」の天井(口蓋)が横に拡がります。
「うわあご」の内部(天井裏)は「鼻腔」で歯の位置と鼻が密接に関係していることを理解してください。
上顎を拡大する装置には、患者さん自身が取り外しできる「可徹式拡大装置(床矯正装置)」と、取り外しのできない「固定式拡大装置」の2種類があります。
自分で取り外しできる可徹式の代表格が「床矯正装置」です。
取り外しができるため手軽ですし、衛生面でも優れていますが、拡大のためのスクリューを組み込んだ床矯正装置は、その構造上、正中口蓋縫合を拡げる能力は固定式のものに劣ります。
「取り外し式で楽そうだ」という安易な理由で床矯正装置を始めても、しっかりと長時間はめないと、根本的な問題は解決しません。
一方、固定式装置は取り外しができないため大がかりなイメージはありますが、24時間仕事をし続けるので効果が確実です。
固定式装置の中でもスケルトンタイプの拡大装置は、あまり違和感もなく正中口蓋縫合を拡げることができるので、大変優れています。
スケルトンタイプの固定式拡大装置
少しずつ左右に拡がっていきます。
4カ所の金属製のバンドとスクリュー(ネジの部分)をしっかりと歯にくっつけるのが基本形です。
1回につき90度スクリューを回転させることで、1回に約0.2㎜拡がりますが、これを週2回行うことで徐々に上顎骨を拡げます。
歯のバンドとしっかりと接着させますので充分な効果が得られます。
床矯正で上顎を拡大すると、取り外しができるため、清潔な上簡便ですが、上顎の骨自体が拡大される量は比較的少なく、著しい口呼吸の改善にはつながりません。
1. スケルトンタイプの拡大装置を装着
2. 上顎を拡大後
3. セクショナルアーチ(ブレースと針金)を装着
以上のように、顎の成長の誘導を利用して、上下の顎の良好な関係と歯がうまく生えてくることのできるスペースを獲得しようとする治療のことを「Ⅰ期治療」と言います。「Ⅰ期治療」を適切な時期に実施されると、「Ⅱ期治療」の時に小臼歯を4本抜歯される可能性が減ります。とにもかくにも「Ⅰ期治療」は小学校低学年までの成長期のスパートの前に開始することが肝心です。
中学1年生頃の成長期後半になり大人の歯が生えそろった後、ブレース(ブラケット)と呼ばれる装置を1つ1つの歯の表面に貼り付け、ワイヤーを通して本格的な矯正治療に入ります。
矯正用ミニインプラントを併用したり、程度によっては顎骨の反応を刺激する外科手術を併用することもあります。
これら大人の歯の矯正治療を「Ⅱ期治療」と呼んで区別しています。
実際には「いつから治療を開始するか」は、歯並びについてしっかり管理してくれるかかりつけ歯科医に定期的に相談するとよいでしょう。
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法律監修:原法律事務所